妖精の散歩道

魔女と呼ばれたこびとの日記。ハーブとアートと猫、ときどき魔法

銀河のカレンダー ✳︎石の箱と木の箱の町✳︎

石の箱の町には
なんでもある
人もたくさんいる

お店も物も
ひしめきあって
ところせましと
並んでる

あれもあるし
これもある

目移りするほど
新しいものが
たーくさん

だけどなんだか
たまにぽつんと
一人ぼっちになったみたい

人はたくさんいるけれど
物はたくさんあるけれど


木の箱の町には
物があんまりない
人もあんまりいない

どこまで行っても
空と山
畑と田んぼの
くりかえし

たまにぽつんと
人がいて
たまにぽつんと
店がある

出かける場所も
見るものも

同じことのくりかえし

新しいものは
なーんにもない

だけどなんだか
一人ぼっちじゃないみたい

人はだあれもいないけど
物はなんにもないけれど


石の箱の中は
電気のあかりに
電気の風がふく
いつもここちよい温度

外は昼も夜も明るくて
どこも見やすく光ってる

あっちからも
こっちからも
聞こえてくる
色とりどりの電気の音

目も耳も大いそがし

石の町の人は
ベルがなったら
起きあがり
ベルがなったら
食べはじめる

えらい人が作った
カレンダーと
時計の数字の中で
生きている

それはとても安心なこと

だけど
もしかして
体の時計はまだ

寝ていたいかもしれないけど
食べたくないかもしれないけど

そんな事を言ってたら
どんどん
みんなに置いてかれる

だからなんだか
一人ぼっちになったみたい

石の町の人は
目に見えない
輪っかの中にいる

大きい輪の人もいれば
小さい輪の人もいる

勝手に人の輪に入ったり
気軽に話しかけては
いけないらしい

話しかけていいのは
制服をきた人

だけど
返ってくるのは
だいたいこう

いらっしゃいませ
かしこまりました
ありがとうございました

同じことのくりかえし

なんだかまるで
人のかたちをした
マシーンみたい

自分の箱にいると
ほっとする
ここは
静かで安全な場所

だけど
やっぱりぽつんと
一人ぼっちになったみたい

となりの箱にも
箱の外にも

人はたくさんいるけれど
物はたくさんあるけれど


木の箱の中は
太陽と月あかり
山から届く風がふく
夏はあつくて寒はさむい

日が昇ると明るくて
日が沈んだらもう真っ暗

木の町では
小さな生き物や
草花たちが
そこら中から
わき出てくる

春がくるとひとりでに

芽が出て
葉が伸び
花咲いて
種がこぼれて
また芽吹く

入れかわり
立ちかわり
色とりどりの花が咲く

鳥の声や
セミの声
カエルの声に
ヒグラシも

あっちからも
こっちからも
聞こえてくる
いのちの歌の大合唱

箱の中でも外でも
おかまいなし
ひっきりなしに歌ってる

だからなんだか
一人ぼっちじゃないみたい

お腹が空いたら
食べはじめ
眠くなったら
床につく

時がきたら
また目ざめ
時がきたら
子をふやす

遠くに行っては
また戻り
旅立っては
また生まれ

同じことのくりかえし

宇宙がつくった
カレンダーと
銀河の時間の中に
生きている

だれも
教えはしないけど
みんな
ちゃんと知っている

宇宙と一緒に生きている

だからいつも
一人ぼっちじゃないみたい

人はだあれもいないけど
物はなんにもないけれど